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個人M&A完全ガイド:サラリーマンが事業を買うまでの全ステップ
スモールM&A入門

個人M&A完全ガイド:サラリーマンが事業を買うまでの全ステップ

10分

個人M&Aが現実的な選択肢になった理由

「起業したいが、ゼロから立ち上げるリスクが怖い」。こう考える会社員は少なくありません。

個人M&Aは、すでに売上と顧客がある事業を引き継ぐ形で独立する方法です。BATONZの2025年レポートによると、個人買い手の成約件数は前年比30%以上増加しました。サラリーマンが本業の経験を活かして事業を買い、独立する流れが定着しつつあります。

ゼロイチの起業では「商品開発 → 集客 → 売上」までに早くても半年から1年かかるのが普通です。しかしM&Aなら、引き継いだ翌月から売上が立つ。この違いは大きい。

買う前に決めておくべき3つの条件

案件を探し始める前に、以下の3点を明確にしておきます。

予算の上限: 自己資金で出せる金額と、融資を含めた最大調達額を把握する。個人M&Aでは300万〜1,500万円の価格帯が最も案件数が多い。

業種と自分の強み: まったく未経験の業種を買うのはリスクが高い。本業で培ったスキルが活きる領域を選ぶべきです。たとえばWebマーケティング経験者がECサイトを買収するケースは成功率が高い傾向にあります。

運営にかけられる時間: 副業として週10時間なのか、退職して専業でやるのか。この判断によって買うべき事業の種類が変わります。属人性の低いストック型ビジネスは副業向き、飲食店や対面サービスは専業前提になるでしょう。

案件探索の実務

現在、個人がM&A案件にアクセスするルートは主に3つあります。

マッチングプラットフォーム: BATONZ、TRANBI、M&Aクラウドが代表的です。BATONZは累計成約数が最も多く、300万円以下の小規模案件も豊富。TRANBIはやや中規模寄りで、1,000万円以上の案件に強みがあります。

M&A仲介会社への相談: 自分で探す時間がない場合や、1,000万円超の案件を狙う場合は仲介会社を使う選択肢もあります。ただし最低手数料が100〜200万円に設定されているケースが多く、小規模案件では割に合いません。

知人や事業承継支援機関からの紹介: 商工会議所の事業承継・引継ぎ支援センターは無料で相談可能。プラットフォームに掲載されていない案件に出会えることもあります。

案件を見る際の鉄則は、ノンネームシート(匿名の概要書)の段階で「なぜ売りたいのか」を推測することです。後継者不在なのか、本業に集中したいのか、業績悪化なのか。売却理由は案件の質を見極める最重要ポイントになります。

トップ面談で何を聞くべきか

NDA(秘密保持契約)を締結し、企業概要書(IM)を確認した後、売り手オーナーとの面談に進みます。ここが個人M&Aの山場です。

確認すべき項目を優先度順に挙げます。

  • 売却の本当の理由(IMに書かれている理由と実態が異なることがある)
  • 事業のキーマンは誰か。その人が辞めたら売上はどうなるか
  • 顧客との契約形態(サブスクか単発か、解約率はどの程度か)
  • 直近3年の月次売上推移(年単位ではなく月単位で見る)
  • オーナーが日常的にやっている業務の具体的な中身と所要時間
  • 取引先や仕入先との関係性(オーナー個人の信頼で成り立っていないか)

面談は一度で終わらせず、2〜3回行うのが理想的です。初回は事業の全体像を把握し、2回目以降で数字や運営の詳細を掘り下げていく。

基本合意からクロージングまで

トップ面談で双方の意向が合致したら、基本合意書(LOI)を締結します。LOIには譲渡価格、譲渡時期、独占交渉権、デューデリジェンス(DD)の範囲などを記載します。

LOI締結後にDDを実施。個人M&Aの場合、大規模な調査は不要ですが、最低限以下の3点は専門家に依頼すべきです。

  • 財務DD: 過去3期分の決算書の精査、簿外債務の確認(税理士に依頼、15〜30万円程度)
  • 法務DD: 契約書・許認可の確認、訴訟リスクの有無(弁護士に依頼、15〜30万円程度)
  • 事業DD: 顧客データ、売上の持続性、競合状況(自分で行うか、業界経験者に相談)

DDで問題がなければ、最終契約書(SPA)を締結し、代金の支払いと事業の引き渡しを行います。引き渡し後は1〜3ヶ月の引き継ぎ期間を設定するのが一般的で、この期間に売り手から業務のノウハウを直接学びます。

個人M&Aで見落としがちなリスク

成功事例ばかりが目立ちますが、失敗するケースも当然あります。よくある失敗パターンを3つ紹介します。

属人性の高い事業を買ってしまう: 前オーナーの人脈や技術力に依存した事業は、引き継いだ瞬間に売上が落ちる。特にコンサルティングや営業代行は要注意です。

運転資金を計算に入れていない: 譲渡価格だけで予算を組み、引き継ぎ後の仕入れ資金や人件費が足りなくなるケース。譲渡価格の3〜6ヶ月分の運転資金は別途確保しておくべきです。

競業避止義務を設定しなかった: 売り手が同じエリアで同業の事業を始め、顧客が流出する。SPA(最終契約書)には必ず競業避止条項を入れてください。

引き継ぎ期間を最大限活用する

クロージング後の1〜3ヶ月は、事業を理解するための最も貴重な期間です。売り手オーナーが協力してくれるこの間に、取引先への挨拶回り、業務マニュアルの作成、従業員との関係構築を集中的に行います。

特に既存顧客への引き継ぎ挨拶は最優先事項です。「オーナーが変わったから取引をやめる」という顧客離れを防ぐには、前オーナーと一緒に訪問し、丁寧に引き継ぐことが欠かせません。

個人M&Aは、正しく準備すれば会社員にとって堅実な独立手段になります。焦らず、信頼できる専門家の力を借りながら、自分に合った案件を見つけてください。

よくある質問

会社員のまま事業を買収できますか?
可能です。個人事業として買収する場合、法人設立は不要です。ただし勤務先の就業規則で副業が禁止されていないか確認してください。買収後の運営が副業に該当するケースが多いため、事前に人事部門への相談を推奨します。
M&A未経験でも交渉を自分で進められますか?
500万円以下の小規模案件であれば、BATONZやTRANBIなどのプラットフォーム上で直接交渉する買い手が大半です。ただし、契約書のリーガルチェックと財務確認は専門家に依頼すべきです。弁護士・税理士への報酬は合計30〜50万円程度が目安になります。
案件を探し始めてから成約まで、どのくらいかかりますか?
平均的には3〜6ヶ月です。案件探索に1〜2ヶ月、面談・交渉に1〜2ヶ月、デューデリジェンスから契約締結まで1〜2ヶ月が標準的なスケジュールです。ただし初めての買収では想定より長引くことが多く、半年〜1年の余裕を見ておくと安心です。
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