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デューデリジェンスとは?個人買い手が最低限やるべき調査項目
スモールM&A入門

デューデリジェンスとは?個人買い手が最低限やるべき調査項目

11分

デューデリジェンスは「買い物前の品定め」

デューデリジェンス(DD)とは、M&Aにおける買収対象の調査のことです。日本語では「買収監査」とも訳されますが、要するに「買おうとしている事業に問題がないか、事前に調べる作業」です。

大企業のM&Aでは数千万円をかけて大手監査法人やコンサルティングファームがDDを行います。しかしスモールM&Aではそこまでの調査は不要であり、費用的にも現実的ではありません。

とはいえ、DDを省略するのは危険です。蓋を開けてみたら帳簿に載っていない借金があった、取引先との契約が売り手個人に紐づいていて引き継げなかった、という事態は実際に起きています。

DDの3つの領域

DDは大きく3つの領域に分かれます。全部を完璧にやろうとするのではなく、案件の特性に応じて重点配分を変えるのがスモールM&Aにおける実務的な進め方です。

1. 財務DD

最も重要な領域です。過去の財務データを精査し、「この事業は本当に儲かっているのか」「隠れた負債はないか」を確認します。

具体的な確認項目は以下の通りです。

  • 過去3期分の確定申告書と決算書: 売上推移、利益率、経費の内訳を年度ごとに比較する
  • 月次の売上データ: 年単位だと季節変動が見えない。月次推移を見て、特定の月だけ異常に高い売上がないか確認
  • 通帳の入出金記録: 帳簿と実際のお金の流れが一致しているか。個人事業の場合、私的な入出金が混在していることがよくある
  • 未払い債務: 買掛金、未払い給与、社会保険料、税金の滞納がないか
  • 在庫の実態: 帳簿上の在庫金額と実際の在庫が合っているか。不良在庫が計上されていないか
  • 売掛金の回収状況: 長期滞留している売掛金は事実上の損失。回収見込みを個別に確認

ここで見つかる問題で最も多いのが「利益の水増し」です。オーナーの役員報酬を低く設定して利益を大きく見せる、私的な経費を事業経費に混ぜているなど、意図的かどうかにかかわらず実態と異なる決算書はよくあります。

2. 法務DD

契約書や法的リスクに関する調査です。弁護士に依頼するのが基本ですが、確認すべき項目を事前に把握しておくとスムーズに進みます。

  • 主要取引先との契約書: オーナー変更時に契約が解除される条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が入っていないか
  • 賃貸借契約: 事業用の物件を借りている場合、名義変更や再契約の条件を確認
  • 許認可の承継: 飲食業の営業許可、建設業の許可など、業種によっては再取得が必要
  • 労務リスク: 従業員がいる場合、未払い残業代の有無、雇用契約の内容を確認。ここを甘く見ると、買収後に従業員から請求されるリスクがある
  • 訴訟やクレーム: 現在進行中の訴訟はもちろん、過去のクレーム対応履歴も重要な情報
  • 知的財産権: 商標、ドメイン、ソフトウェアのライセンスが適切に管理されているか

3. 事業DD

事業の将来性や持続可能性を評価する調査です。ここは業界に詳しい買い手自身が判断するのが最も精度が高くなります。

  • 顧客構成: 売上の50%以上を1社に依存していないか。上位3社で80%以上なら依存度が高すぎる
  • 競合環境: 新規参入の脅威、価格競争の激しさ、市場の成長性
  • 売り手の関与度合い: 前オーナーが抜けたら回らなくなる業務がどれだけあるか
  • 従業員の意向: 買収後も残ってくれるか。キーパーソンが退職するリスクはないか
  • システムやインフラの状態: ECサイトならサーバー環境やCMSのバージョン、店舗なら設備の老朽化

費用を抑えるDDの進め方

500万円以下のスモールM&Aで、DDに100万円をかけるのは合理的ではありません。コストを抑えつつ致命的なリスクを拾うための進め方を紹介します。

まず自分でできる範囲を調べる: 事業DDは専門家に頼むまでもなく、業界経験があれば自分で判断できます。売り手が提出した資料を読み込み、疑問点をリストアップしてトップ面談で直接確認しましょう。

税理士に最低限の財務チェックを依頼: フルスコープの財務DDではなく、「確定申告書3期分と通帳を照合し、異常値がないかチェックしてほしい」と範囲を絞って依頼すれば、10〜15万円で対応してくれる税理士は多いです。

契約書のリーガルチェックは弁護士に: 最終契約書(SPA)の作成・チェックと合わせて、主要取引先の契約書確認を依頼すると効率的です。これも範囲を絞れば15〜25万円で収まるでしょう。

DDで問題が見つかったときの対応

DDの結果、問題が見つかることは珍しくありません。むしろ「何も問題がない案件」の方が稀です。

問題が見つかった場合の選択肢は3つあります。

譲渡価格の減額交渉: 簿外債務が見つかった場合、その金額分を譲渡価格から差し引く交渉が一般的。たとえば未払い社会保険料が80万円あれば、譲渡価格を80万円下げるか、売り手が事前に清算するかのいずれかになります。

条件の追加: 競業避止義務の強化、表明保証条項の追加、エスクロー(代金の一部を第三者に預けて一定期間経過後に支払う仕組み)の設定など、契約条件でリスクをカバーする方法もあります。

取引の中止: 重大な粉飾決算、隠蔽された訴訟、事業の存続に関わる許認可の問題などが見つかった場合は、撤退すべきです。ここでサンクコスト(すでにかけた時間と費用)に引きずられてはいけません。DDの費用は「悪い案件を掴まないための保険料」だと割り切ってください。

DDのスケジュール

スモールM&AにおけるDDの標準的な期間は2〜4週間です。大企業のM&Aでは数ヶ月かかりますが、調査範囲が限定されるスモールM&Aではそこまで長くなりません。

売り手側の資料準備に1〜2週間、専門家による分析に1〜2週間、結果を踏まえた交渉に1週間。合計で3〜5週間を見込んでおけば十分です。

DDは時間もお金もかかりますが、ここを省略して後悔するケースは数多く報告されています。買い手にとって最大の防御手段がDDです。必要な投資だと考えて、しっかり取り組んでください。

よくある質問

デューデリジェンスにかかる費用はどのくらいですか?
スモールM&Aの場合、財務DDと法務DDを税理士・弁護士に依頼して合計30〜80万円が目安です。500万円以下の案件であれば重点項目に絞ったミニDDで20〜30万円程度に抑えることも可能です。事業DDは自分で行うのが基本です。
DDで問題が見つかった場合、取引は中止すべきですか?
問題の内容によります。簿外債務や訴訟リスクなど重大な問題は取引中止の判断材料になりますが、軽微な問題であれば譲渡価格の減額交渉で対応するのが一般的です。『問題ゼロ』の案件はほぼ存在しないため、許容できるリスクかどうかを見極める姿勢が重要です。
DDを自分だけで行うのは危険ですか?
財務と法務は専門家に依頼すべきです。帳簿の読み方や契約書のリスク条項は、経験がないと見落としやすい領域です。事業DDについては、その業界で働いた経験があれば自分で十分対応できます。コストを抑えたい場合でも、最低限、税理士による決算書レビューだけは入れてください。
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