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後継者がいない場合の5つの選択肢
事業承継

後継者がいない場合の5つの選択肢

10分

後継者がいない会社は127万社

中小企業庁の推計では、2025年までに70歳を超える中小企業経営者は約245万人。そのうち約127万社が後継者未定のまま廃業リスクを抱えているとされています。

黒字経営を続けていても、後継者がいなければ会社は存続できません。年間約5万社が廃業しており、そのうち約6割は黒字企業です。従業員の雇用が失われ、取引先にも影響が波及する。地域経済にとって深刻な問題です。

ただし、後継者がいないからといって廃業しか選択肢がないわけではありません。状況に応じた5つの選択肢を整理します。

選択肢1:M&Aで第三者に売却する

後継者不在企業にとって、最も現実的な選択肢がM&Aです。

社外の企業や個人に株式や事業を売却し、経営権を移転する方法です。売り手経営者は売却益を得てリタイアでき、従業員の雇用も原則として維持されます。

近年はBATONZやTRANBIなどのマッチングプラットフォームが普及し、年商1億円以下の小規模企業でも買い手が見つかるケースが増えました。2025年のBATONZ成約件数は約1,200件に達しており、5年前の3倍以上です。

M&Aの成約までに必要な期間は、案件の規模にもよりますが半年から2年程度。準備が早いほど有利な条件で売却できる傾向があります。経営者の健康状態が悪化してから慌てて売りに出すと、足元を見られて買い叩かれることもあるため注意が必要です。

選択肢2:従業員への承継(MBO)

社内に経営意欲のある人材がいれば、従業員承継は有力な選択肢になります。

事業内容を熟知した人間が引き継ぐため、業務の継続性が高く、取引先や顧客との関係も維持しやすい。外部から新しい経営者が来ることに対する従業員の抵抗感も少なくて済みます。

最大の壁は資金調達です。自社株の評価額が数千万円から数億円になる場合、従業員個人がその資金を用意するのは難しい。解決策としては、金融機関からのLBO融資(買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保にした融資)や、投資ファンドの活用が考えられます。

段階的に株式を譲渡する方法もあります。5〜10年かけて少しずつ株式を移転し、その間に後継者の資金負担を分散させるやり方です。

選択肢3:外部から経営者を招聘する

社内に適任者がいない場合、外部からプロの経営者を招く方法があります。

経営人材バンクやヘッドハンティング会社を通じて候補者を探します。日本政策金融公庫が運営する「事業承継マッチング支援」では、後継者を探している企業と経営に意欲のある人材をつなぐサービスを提供しています。

ただし、この方法にはリスクが伴います。外部から来た経営者が社風や業界慣行を理解するまでに時間がかかり、既存の従業員との軋轢が生まれることも珍しくない。候補者の経営能力を見極める期間として、まず取締役や顧問として参画してもらい、1〜2年の試用期間を設けるのが現実的でしょう。

選択肢4:IPO(株式公開)

適用できる企業は限られますが、IPOも事業承継の手段として機能します。

株式を公開すれば、特定の後継者に株式を集中させる必要がなくなる。プロの経営者を市場から調達できるようになり、所有と経営を分離した持続可能な体制を構築できます。

現実的には、IPOが可能な企業は売上規模で10億円以上、安定した利益成長が見込める会社に限定されます。準備期間も3〜5年は必要で、監査法人への報酬や内部統制の整備コストもかかる。中小企業の大多数にとっては選択肢に入りにくいのが正直なところです。

選択肢5:廃業(計画的な清算)

あらゆる手段を検討した結果、どの方法も適さない場合は計画的な廃業を選ぶことになります。

「廃業」というとネガティブな印象を持たれがちですが、準備なしの突然の倒産と計画的な清算ではまったく意味合いが異なります。計画的に進めれば、従業員の再就職支援や取引先への十分な引き継ぎ期間を確保できる。資産の売却も適正価格で行えます。

ただし、廃業にもコストがかかる点は見落とされがちです。設備の処分費用、原状回復費用、税理士・弁護士への報酬、退職金の支払い。残余財産があっても、清算所得課税でかなりの部分が税金に持っていかれることもある。

資産超過の会社であれば、廃業よりもM&Aのほうが手取り額が大きくなるケースが多いことは覚えておくべきです。

判断のフレームワーク

5つの選択肢から最適なものを選ぶために、以下の順序で検討してみてください。

まず、社内に経営意欲と能力のある人材がいるかどうか。いれば従業員承継を軸に検討する。

いなければ、M&Aの可能性を探る。会社に安定した収益基盤、独自の技術、優良な顧客基盤があれば、買い手は見つかりやすい。

M&Aも難しい場合は、外部経営者の招聘を検討する。ただし、この方法は時間とコストがかかるため、経営者に余力があるうちに動く必要があります。

IPOは売上規模と成長性が条件を満たす場合にのみ検討する。

どれも該当しない場合に、初めて計画的廃業を視野に入れる。

いずれの選択肢でも共通しているのは、早く動くほど有利だということです。まずは事業承継・引継ぎ支援センターに連絡を取るところから始めてみてください。

よくある質問

後継者不在でもすぐに廃業すべきではない理由は?
廃業すると従業員の雇用、取引先との関係、長年築いた技術やノウハウがすべて失われます。黒字企業の廃業は地域経済にも打撃を与えます。M&Aや従業員承継など、事業を存続させる方法を検討してから判断すべきです。
後継者がいない場合、最初に何をすべきですか?
各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターに相談するのが第一歩です。無料で事業承継の方向性について助言を受けられます。M&Aの可能性を探る場合は、並行してM&A仲介会社への相談も進めるとよいでしょう。
従業員に承継を打診したら断られました。どうすべきですか?
断られた理由を確認してください。株式買取資金が問題なら融資制度の案内で解決する場合があります。経営責任への不安が理由なら、段階的に権限を委譲して経営経験を積ませるアプローチが有効です。それでも難しければ、M&Aに切り替えましょう。
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