M&Aの手数料には3つの種類がある
M&Aにおける手数料は、利用するサービスによって体系が大きく異なります。まず全体像を整理しておきましょう。
1. プラットフォーム手数料
BATONZやTRANBIなどのマッチングサイトに支払う費用です。成約価格に対する一定割合(2〜5%)か、月額固定料金のいずれかが一般的。売り手側は基本的に無料で、買い手側に課金されるモデルがほとんどです。
2. 仲介手数料(FA手数料)
M&A仲介会社やFA(フィナンシャルアドバイザー)に支払う手数料。レーマン方式で計算されることが多く、取引金額5億円以下の部分に5%、5〜10億円の部分に4%といった階段式の料率が適用されます。最低手数料は500万〜2,000万円で設定されるのが一般的です。
3. DD・専門家費用
デューデリジェンス(DD)を税理士・弁護士に依頼する際の費用。プラットフォームや仲介とは別に発生します。相場は税務DD 20〜50万円、法務DD 30〜80万円程度。案件規模が大きくなれば費用も増加します。
この記事では主に「1. プラットフォーム手数料」に焦点を当てて解説します。
主要プラットフォームの手数料比較
| プラットフォーム | 売り手 | 買い手 | 課金タイミング |
|---|---|---|---|
| BATONZ | 無料 | 成約価格の2%(最低25万円) | 成約時 |
| TRANBI | 無料 | 月額3,980〜9,800円 | 毎月(成約手数料なし) |
| M&Aクラウド | 無料 | 月額掲載料(個別見積) | 毎月 |
| M&Aサクシード | 無料 | 成約価格の数%(要問合せ) | 成約時 |
| スピードM&A | 無料 | 成約価格の5% | 成約時 |
手数料体系の仕組みを深掘りする
成約価格連動型(BATONZ・スピードM&A)
成約価格に対して一定の割合を支払うモデル。分かりやすい反面、成約価格が上がるほど手数料も増加します。
BATONZの2%は業界内で低めの水準。スピードM&Aの5%は高めですが、プラットフォーム側のマッチング支援が手厚い点を考慮すると妥当とも言えます。
注意すべきは最低手数料の存在です。BATONZの最低手数料25万円は、成約価格250万円の案件で10%に相当します。100万円の案件なら25%。小規模案件ほど実質的な手数料率が跳ね上がる構造です。
月額定額型(TRANBI)
毎月定額を支払い、成約時の手数料は発生しないモデル。TRANBIのベーシックプランは月額3,980円、プレミアムプランは月額9,800円。
最大の利点は、成約価格がいくらであっても追加費用がかからないこと。成約価格3,000万円の案件をBATONZで買えば60万円、TRANBIなら月額費用だけで済みます。この差額は無視できません。
ただし月額費用は案件が見つかるまで毎月発生するため、成約までに時間がかかるとトータルコストが積み上がっていくリスクはあります。
ハイブリッド型(M&Aクラウド)
月額掲載料+成約時手数料の両方が発生するケースもあります。M&Aクラウドは料金体系を個別見積もりとしており、一律の比較が難しい部分があります。法人向けサービスのため、個人利用者は気にする必要はないでしょう。
成約価格別の実額シミュレーション
具体的な金額で各プラットフォームの費用を比較してみましょう。買い手側の費用を、探索期間6ヶ月と想定して計算します。
成約価格300万円の場合
| プラットフォーム | 手数料 | 月額(6ヶ月) | 合計(税別) |
|---|---|---|---|
| BATONZ | 25万円(最低手数料適用) | 0円 | 25万円 |
| TRANBI | 0円 | 23,880円〜58,800円 | 約2.4〜5.9万円 |
| スピードM&A | 15万円 | 0円 | 15万円 |
この価格帯ではTRANBIの優位性が際立ちます。BATONZの25万円は成約価格の8.3%に相当し、割高感が否めません。
成約価格1,000万円の場合
| プラットフォーム | 手数料 | 月額(6ヶ月) | 合計(税別) |
|---|---|---|---|
| BATONZ | 20万円 | 0円 | 20万円 |
| TRANBI | 0円 | 23,880円〜58,800円 | 約2.4〜5.9万円 |
| スピードM&A | 50万円 | 0円 | 50万円 |
TRANBIが最安であることに変わりはありませんが、BATONZの20万円も許容範囲に入ってきます。案件数の多さを考慮すると、BATONZの手数料を払う価値は十分にあるでしょう。
成約価格5,000万円の場合
| プラットフォーム | 手数料 | 月額(6ヶ月) | 合計(税別) |
|---|---|---|---|
| BATONZ | 100万円 | 0円 | 100万円 |
| TRANBI | 0円 | 23,880円〜58,800円 | 約2.4〜5.9万円 |
| スピードM&A | 250万円 | 0円 | 250万円 |
5,000万円規模になると差額が顕著です。BATONZの100万円とTRANBIの約6万円で94万円の差。スピードM&Aとの差は244万円にもなります。
プラットフォーム手数料 vs 仲介会社手数料
参考までに、M&A仲介会社の手数料と比較してみます。成約価格1,000万円の案件の場合:
| 利用サービス | 手数料 |
|---|---|
| TRANBI | 約6万円 |
| BATONZ | 20万円 |
| スピードM&A | 50万円 |
| 仲介会社A(最低手数料200万円) | 200万円 |
| 仲介会社B(最低手数料500万円) | 500万円 |
プラットフォームと仲介会社の手数料差は10倍以上。小規模M&Aでは、仲介会社を使う経済合理性がほとんどないことが分かります。
ただし仲介会社は案件の発掘・バリュエーション・交渉・DD手配まで一貫してサポートしてくれるため、サービス内容が根本的に異なります。「安いからプラットフォーム」と短絡的に判断するのではなく、自分でどこまで対応できるかを冷静に見極めてください。
手数料以外に発生するコスト
プラットフォームの手数料だけでM&Aの総費用は決まりません。以下の費用も予算に組み込んでおく必要があります。
| 費用項目 | 相場 |
|---|---|
| デューデリジェンス(税務DD) | 20〜50万円 |
| デューデリジェンス(法務DD) | 30〜80万円 |
| 株式譲渡契約書の作成・レビュー | 10〜30万円 |
| 登記変更(役員変更等) | 5〜15万円 |
| 許認可の変更届出 | 業種により異なる |
成約価格1,000万円の案件であれば、プラットフォーム手数料を含めた総費用は80〜200万円程度を見込んでおくのが妥当です。
まとめ
M&Aプラットフォームの手数料は、サービスごとに「成約価格連動型」と「月額定額型」に大別されます。単純にコストだけで比較するならTRANBIが最安ですが、案件数やサポート体制を含めた総合的な判断が必要です。
最終的に重要なのは、「手数料を安くすること」ではなく「良い案件を適正な価格で買うこと」です。手数料を10万円節約するために、より良い案件を見逃すのでは本末転倒。予算の中でプラットフォーム手数料をどう位置づけるか、全体のコスト構造を把握した上で判断することをおすすめします。