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事業承継計画書の作り方:記載項目とテンプレート
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事業承継計画書の作り方:記載項目とテンプレート

14分

計画なき承継は失敗する

事業承継に失敗する会社に共通する特徴がある。計画を作っていない。

帝国データバンクの調査によると、事業承継の準備を行っている中小企業は全体の約4割にとどまる。残りの6割は「そのうちやろう」と思いながら手をつけていない。その結果、経営者の急な体調悪化で承継が頓挫したり、後継者が準備不足のまま経営を引き継いで業績が悪化したりする。

事業承継計画書は、こうした事態を防ぐための実行文書だ。「いつ、誰に、何を、どうやって引き継ぐか」を明文化し、関係者全員が同じ方向を向くためのものである。

計画書に盛り込むべき5つの柱

事業承継計画書に決まったフォーマットはない。会社の規模や業種によって内容は変わる。ただし、盛り込むべき項目は共通している。

大きく分けて、現状分析、後継者情報、承継スケジュール、財務計画、リスク対策の5つだ。

第1の柱:現状分析

現状を正確に把握していなければ、計画は絵に描いた餅になる。

会社の基本情報

社名、所在地、設立年月日、資本金、従業員数、事業内容。これらは書くまでもないように思えるが、計画書の冒頭に整理しておくことで、金融機関や専門家に相談する際の基礎資料にもなる。

経営状況の整理

直近3期分の売上高、営業利益、経常利益、純資産を記載する。売上の推移だけでなく、利益率の変動にも注目してほしい。取引先の上位5社と売上依存度、主要な仕入先との関係性、従業員の年齢構成と勤続年数。これらが承継後の経営安定性に直結する。

特定の取引先への依存度が50%を超えている場合、その取引先が承継をどう受け止めるかが経営リスクになる。事前に打診しておくべきだ。

株式・資産の状況

自社株の保有者と持株比率、株式評価額の概算、不動産や設備などの資産一覧。株式が親族間で分散している場合は、議決権の集約方法まで検討しておく必要がある。

第2の柱:後継者情報

後継者の選定

後継者が決まっていない場合は、候補者のリストアップから始める。親族内に候補がいるのか、従業員のなかに適任者がいるのか、第三者承継も視野に入れるのか。選定基準を明文化しておくと、感情に流されずに判断できる。

後継者候補の氏名、年齢、現在の役職、経歴、経営に関する教育・研修の受講状況を記載する。複数の候補者がいる場合は、それぞれの強みと課題を比較形式で整理するとわかりやすい。

後継者育成計画

後継者が決まっている場合、何を、いつまでに習得させるかを明確にする。

実務面では、各部門のローテーション、取引先への同行・引き合わせ、決算業務への参画、金融機関との面談。経営面では、経営会議への出席、中期経営計画の策定への参加、業界団体や経営者団体への加入。

育成の進捗を定期的に評価する仕組みも組み込んでおきたい。半年に一度、経営者と後継者で面談を行い、課題と次の目標を確認する。育成が予定どおり進まない場合の代替策も、この段階で考えておく。

第3の柱:承継スケジュール

5カ年計画の立て方

事業承継は5年から10年かけて段階的に進めるのが望ましい。3年では短すぎ、15年では長すぎる。5カ年が現実的な目安だ。

1年目は現状分析と計画策定、後継者の選定。2年目は後継者の社内育成開始、取引先への段階的な紹介。3年目は後継者を取締役に選任し、重要な意思決定に関与させる。4年目は代表権の移譲、株式の移転開始。5年目は完全な経営移行と、先代のフェードアウト。

この5年間で、経営者は徐々に権限を委譲していく。いきなり全権を渡すのではなく、段階的に移行するのがポイントだ。

マイルストーンの設定

各年度に達成すべきマイルストーンを3つ程度設定する。測定可能な目標にすることが重要で、「後継者が成長する」のような曖昧な表現は避ける。「後継者が営業部門のマネジメントを単独で遂行できるようになる」「主要取引先5社との関係構築が完了する」など、客観的に評価できる形にする。

スケジュール通りに進まないことも多い。その場合に備えて、各マイルストーンに3か月程度のバッファを設けておくのが実務的な工夫だ。

第4の柱:財務計画

株式移転の方法と税務

自社株をどう移転するかは、承継コストに直結する。贈与、相続、売買のいずれかが基本だが、それぞれ税負担が異なる。

贈与の場合は暦年課税か相続時精算課税を選択する。2024年以降の相続時精算課税制度では、年110万円の基礎控除が新設されているため、少額ずつの贈与が以前より使いやすくなった。

事業承継税制の特例措置を活用する場合は、特例承継計画を2026年3月31日までに都道府県知事に提出する必要がある。認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けることが要件だ。税理士や商工会議所が認定機関として活動しているため、顧問税理士にまず相談してほしい。

承継に必要な資金の見積もり

株式の取得費用、贈与税・相続税の納税資金、退職金の原資、設備更新や運転資金。これらを合計すると、数千万円から数億円規模になることも珍しくない。

資金の調達方法としては、自己資金のほかに、金融機関からの借入、日本政策金融公庫の事業承継向け融資、事業承継補助金の活用が考えられる。計画書に資金調達のスケジュールと調達先を明記しておくと、金融機関との交渉もスムーズに進む。

第5の柱:リスク対策

経営者の不測の事態への備え

計画途中で経営者が病気や事故で倒れた場合に、誰がどう対応するか。この想定がない計画書は不完全だ。

生命保険による資金手当て、遺言書の作成、株式の信託。これらを組み合わせて、最悪の事態でも会社が止まらない仕組みを作っておく。特に株式が相続で分散するリスクは、遺言書や種類株式を使って事前に対処できる。

関係者とのトラブル防止

親族間の遺産分割争い、従業員の大量退職、取引先の契約打ち切り。承継時にはさまざまなトラブルが起こりうる。

トラブルを完全に防ぐことは難しいが、事前に想定して対策を講じておけば被害は最小限に抑えられる。取引先には承継の方針を早めに伝え、従業員には承継後の処遇方針を明確にする。親族に対しては、相続全体のなかでの自社株の位置づけを説明し、理解を得ておく。

中小企業庁のテンプレートを使う

一から計画書を作るのが難しければ、中小企業基盤整備機構が提供するテンプレートを活用しよう。

中小企業基盤整備機構のWebサイトでは「事業承継計画表記入様式」(Excel)と「事業承継計画書骨子記入様式」(Word)が無料でダウンロードできる。各項目に記入例が添付されており、自社の情報を当てはめていくだけで骨格が完成する。

J-Net21の「経営ハンドブック」にも事業承継計画の作り方が掲載されている。業種別の記載例もあるため、自社に近い事例を参考にできる。

テンプレートをそのまま使うだけでは不十分な部分もある。特に株式評価額の算定や税務シミュレーションは専門家に依頼すべきだ。テンプレートで全体像を掴み、細部は専門家と詰めるという二段構えを推奨する。

専門家への依頼と公的支援

計画書を自力で完成させる必要はない。むしろ専門家の力を借りたほうが、質の高い計画になる。

事業承継・引継ぎ支援センターは全国47都道府県に設置されており、無料で相談できる。2023年度には23,722件の相談に対応しており、経営者保証の解除についてもアドバイスを受けられる。

顧問税理士は税務面の計画策定に不可欠だ。中小企業診断士は経営全般のアドバイスができる。弁護士は株式移転や遺言書の法的整備をサポートしてくれる。

専門家への報酬は発生するが、計画なしに承継を進めて失敗したときの損害に比べれば安いものだ。承継の準備に早すぎるということはない。気づいたときが始めどきだ。

よくある質問

事業承継計画書は誰が作るべきですか?
経営者本人が主導して作成するのが原則です。ただし、財務分析や税務シミュレーションには専門知識が必要なため、顧問税理士や中小企業診断士と連携して作成するのが現実的です。事業承継・引継ぎ支援センターでも無料で相談できます。
計画書はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
最低でも年1回は見直しましょう。後継者の成長度合いや経営環境の変化に応じて、スケジュールや数値目標を更新する必要があります。半期ごとの見直しを推奨します。大きな環境変化があった場合は、その都度修正してください。
事業承継税制の特例承継計画と事業承継計画書は同じものですか?
別物です。特例承継計画は事業承継税制の納税猶予を受けるために都道府県知事に提出する書類で、様式が決まっています。事業承継計画書は自社の承継を円滑に進めるために作成する社内文書で、形式は自由です。両方とも作成することを推奨します。
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