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Webメディア・ブログのM&A:PV単価と収益性の見方
業種別M&A

Webメディア・ブログのM&A:PV単価と収益性の見方

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Webメディア売買は「PVにいくら払うか」の判断

WebメディアやブログのM&Aは、スモールM&Aの中でも最も手軽に始められるジャンルだ。従業員の引き継ぎもなく、在庫も店舗もない。ドメインとサーバーの管理権限を移転すれば、翌日から新オーナーとして運営できる。

マッチングプラットフォームには常時数百件のメディア案件が並んでおり、10万円台の個人ブログから数千万円の法人メディアまで幅広い。しかし、手軽だからこそ落とし穴も多い業種である。特にGoogleのアルゴリズム変動による収益消失リスクは、他業種にはないWebメディア固有の問題だ。

バリュエーションの基本

Webメディアの譲渡価格には2つの算出方法がある。

PV単価方式。月間PVに単価を掛ける方法で、月間PV x 10〜30円が目安だ。月間100万PVのメディアなら1,000万〜3,000万円。PV単価が10円に近づくのは雑記ブログやニュース系の低収益メディアで、30円以上がつくのは金融、転職、不動産など高単価アフィリエイト案件を扱うジャンル特化メディアだ。

利益倍率方式。月間営業利益の12〜24ヶ月分で算出する方法で、こちらのほうが実務的だ。月間営業利益30万円のメディアなら360万〜720万円がレンジとなる。

いずれの方式でも、直近12ヶ月の実績ベースで計算する。3ヶ月前にPVが急増した場合、その理由がバズ(一時的な話題)なのか、SEO施策の結果なのかで評価が変わるからだ。

メディアの特徴月間利益倍率
PV減少トレンド、単一キーワード依存10〜14倍
PV安定、複数収益源あり14〜20倍
PV成長中、ブランド力あり、メルマガ会員多数20〜24倍

収益構造を分解して見る

Webメディアの収益源は主に4つに分かれる。

アドセンス(ディスプレイ広告)。PVに比例して収益が発生する。RPM(1,000PVあたりの収益)は200〜500円が一般的で、金融や保険ジャンルでは1,000円を超えることもある。PVが安定していれば収益も安定するが、広告単価は四半期ごとに変動する。

アフィリエイト。ASP経由の成果報酬型広告だ。案件によって1件数百円から数万円まで幅がある。クレジットカード案件で1件1万円、転職エージェント案件で1件3万円といった高単価案件を扱うメディアは、少ないPVでも高収益を上げられる。

純広告・記事広告。企業から直接広告掲載の依頼を受けるモデルだ。月額固定の純広告や、1記事20万〜100万円の記事広告がある。メディアのブランド力が問われるため、月間100万PV以上の規模でないと成立しにくい。

自社商品・サービス。情報商材、オンライン講座、有料メルマガなど。メディアが集客装置として機能し、自社商品で収益を上げるモデルは利益率が高い。ただし属人性も高いため、オーナー交代後に売上が維持できるかの見極めが必要になる。

買収時は、この4つの構成比を把握し、どの収益源がどの記事から発生しているかを紐づけて分析する。収益の80%がたった5記事から発生している、というメディアは珍しくない。その5記事の検索順位が落ちれば、収益の大半が消える。

Googleアルゴリズム依存リスクの見極め

Webメディア最大のリスクは、Googleのコアアップデートによるトラフィック急落だ。2024年以降、AIによる検索結果の変化(SGE/AI Overview)も加わり、従来型のSEOメディアは逆風にさらされている。

買収前に確認すべきデータは以下の通り。

Google Search Consoleの24ヶ月分のデータ。クリック数とインプレッション数の推移を月別に確認する。コアアップデートのタイミング(3月、8月、11月に多い)でトラフィックが急落していないかを見る。一度大きく落ちたメディアが回復した実績があるなら、コンテンツの質に一定の評価がある証拠だ。

流入キーワードの分散度。上位10キーワードで全トラフィックの何%を占めるかを確認する。50%以上なら集中リスクが高い。20%以下であれば、特定キーワードが飛んでも全体への影響は限定的だ。

指名検索の有無。メディア名やブランド名での検索流入があるかどうかは、Googleアルゴリズムへの依存度を測る重要な指標だ。指名検索が全体の10%以上を占めていれば、読者からの認知と信頼があると判断できる。

アフィリエイト案件の継続性

アフィリエイト収益が柱のメディアを買う場合、ASP案件の契約条件を精査する必要がある。見落としがちなのは特別単価の存在だ。

通常単価5,000円の案件でも、売り手がASPとの交渉で特別単価15,000円を獲得しているケースがある。この場合、メディアの表面上の収益は特別単価で計算されているが、オーナー交代後に通常単価に戻されれば収益は3分の1になる。

特別単価がいつ、どのような条件で設定されたのか。オーナー交代後も維持される確約があるのか。ASPの担当者に直接確認するか、少なくとも売り手から書面での説明を求めるべきだ。特別単価分を除いた通常単価ベースで利益計算をやり直し、それでも投資回収が見込める場合のみ買収を進めるのが堅実な判断になる。

コンテンツの品質と法的リスク

Webメディアのコンテンツは資産であると同時に、リスクの源泉でもある。

著作権侵害。他サイトからのコピーコンテンツや、無断使用の画像が含まれていないかを確認する。コピーチェックツール(CopyContentDetectorやturnitin等)で主要記事をスキャンし、著作権侵害リスクを洗い出す。

薬機法・景表法違反。健康食品、美容、医療系のメディアでは、記事内の表現が薬機法や景品表示法に抵触していないかの確認が必須だ。違反コンテンツが大量にある場合、買収後の修正コストも織り込む必要がある。

YMYLジャンルの特殊性。医療、法律、金融など「Your Money Your Life」に該当するジャンルは、Googleが特にE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を重視する領域である。監修者の確保や運営者情報の信頼性が求められるため、個人での買収はハードルが高い。

Webメディア買収で利益を出すには

Webメディアを買って利益を出している買い手に共通するのは、買収後のテコ入れ計画を事前に持っていることだ。

記事のリライトによるSEO順位の改善、収益性の低い記事への高単価案件の差し替え、メルマガやLINE公式アカウントによる直接接点の構築。こうした施策を買収前に計画し、実行可能性を見積もった上で投資判断を行っている。

逆に、買った瞬間の収益をそのまま享受するだけの姿勢では、アルゴリズム変動やASP案件の終了に耐えられない。Webメディアは放置すれば必ず劣化する資産である。買った後に何をするか。その答えを持たずに買うべきではない。

よくある質問

Webメディア・ブログの譲渡価格はどう決まりますか?
月間PV×10〜30円が一つの目安です。月間50万PVのメディアなら500万〜1,500万円程度。ただし実務上は月間営業利益の12〜24ヶ月分で算出するケースが多く、収益性の高いジャンル特化メディアほど高い倍率がつきます。
Googleのアルゴリズム変動リスクにはどう備えますか?
直近24ヶ月分のアクセス推移を確認し、コアアップデートの影響を受けた履歴があるかを調べます。特定のキーワードに依存しすぎず、指名検索やSNS・メルマガからの流入が20%以上あるメディアはリスクが低いと判断できます。
アフィリエイト収益のメディアは買っても大丈夫ですか?
ASP案件の契約条件を必ず確認してください。特別単価(通常より高い報酬単価)が売り手個人との信頼関係で設定されている場合、オーナー交代後に通常単価に戻されるリスクがあります。特別単価による上乗せ分は、譲渡価格の算定から除外して保守的に見積もるのが安全です。
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